FGO 第2部5.5章 地獄界曼荼羅 平安京、第四幕まで攻略中のメモです。気づいたことを書いていきます。一部ネタバレを含むのでご注意を!
・第三幕で清少納言が自分のことを「草の庵」と称して紫式部宛に言伝てたの、悶絶ものでした…
・このシナリオを書いた人、最高、最っ高です!(以下説明します)— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・「草の庵」エピソードは、間違いなく『枕草子』(角川ソフィア版)七十八段「頭の中将のすずろなる空言」のオマージュです
・当時の頭中将(現在でいう官房長官的な政治的地位)である藤原斉信が、宮中のつまらない噂話を信じてしまい、清少納言のことを無視していた、というシーンから始まります
— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・斉信の無視に、清少納言は「単なる誤解なんだから放っておけばいいだろ」と気にしていませんでしたが、そうした態度にもイラついた斉信は「ちょっかい」を仕掛けます
・ある夜、清少納言宛に「蘭省花時錦帳下」とだけ書かれた手紙を使者にもたせて、「これにすぐ返事をもらってこい」と命じたのです— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・読下し文「蘭省の花の時の錦帳の下」とは白居易の詩の一節で、「友よ、きみが都にて天子のそばで、華やかな場所、華やかな時をすごす頃…」という意味ですね
・続く原文(第四句)は「廬山雨夜草庵中(ぼくは都から離れた廬山のふもとのあばら屋(草庵)で、雨の夜にひとり寂しく過ごしているよ)」
— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・斉信の文が厄介なのは、単に「この続きを知ってるか?」でないことです(それだと簡単すぎる)。当時、中宮定子付き女房として華やかな場所、華やかな時を過ごしていた清少納言が、もし「正解」を返してしまうと「(その少納言を無視している斉信が)遠く離れて寂しく過ごしているよ」となってしまう
— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・それは斉信を直接貶めてしまうことになるし、第一返答として雅ではない(おそらく斉信はそこまで計算して「さあどう返すんだ? 才女なんだろ?」と試してきている)
・そこで清少納言は、漢詩の正しい続きをそのまま書くのではなく、その場で咄嗟に「草の庵を誰か尋ねむ」と和歌の下の句を書きました— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・漢詩に漢詩で返すのでなく、和歌で返すと、「応答」のように読めるんですよね
つまり、
斉信「華やかな場所で華やかな時を過ごす友よ」
少納言「あ、いっぽうわたしは誰も訪ねてこないあばら屋で(あなたに無視されていることもあり)寂しく過ごしてます、ってことですよねー」
となるわけです— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・しかも、この「草の庵を誰か尋ねむ」という下の句は、斉信の同僚であり出世レースのライバルにあたり、和歌、漢詩、管弦すべてに才能を発揮した当時最高峰の文化人・藤原公任が(前述の白居易の詩を踏まえて)作った句でした
・つまり斉信が迂闊に文句をつけると、公任を貶めることになってしまう— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・この見事な返答に対し、斉信は同僚や友人を集めてどう再返答しようかと一晩中考えて、無理、やっぱ清少納言すげえ、仲良くしとこう…となりました
・この話は宮中で大きな噂となり、清少納言の元夫・則光や中宮定子や帝の耳にまで入り、しばらく清少納言は「草の庵」というあだ名で呼ばれたそうです— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・ここまでが背景説明でここからFGOに戻ります。やっと本題(長っ!)
・今回の舞台は西暦1008年の平安京です
・つまり清少納言はすでに内裏を退所してひっそりと郊外(草の庵)で暮らしており、いっぽう紫式部は中宮彰子の元で(つまり「華やかな場所、華やかな時」に)『源氏物語』を執筆しています— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・そしてなにより、なによりですよ! あの白居易の詩は「友よ」と呼びかける内容なんですよ!
・「華やかな場所で華やかな時を過ごす友よ、わたしは離れて寂しく過ごしているよ(でも詩を詠むくらいには元気だよ)」と!!— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・今回のイベントのあのタイミングで、清少納言が「あの人(紫式部)ならきっとすぐこの意味がわかるはず」と言って自分を「草の庵」と称した尊さ、少しでも伝わりましたでしょうか!!??
・尊くないですか? ええ尊いですよね!? ね!???— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・この、清少納言と紫式部の(FGO内でも史実(主要学説)に準じて「会ったことはない」とされている)微妙な距離感を、「『草の庵』がよろしく云ってた」という一言で絶妙に表現しているところ、思いっきりわたくしの心に刺さっております! ありがとう! ありがとう地獄界曼荼羅!!(とりあえず了
— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
(第五幕攻略中メモ)
・平安文学ファンの悲願と言ってもいい「もし清少納言が源氏物語を読んでその感想を残していたら…」を、こんな形で描くとは…っ!
・紫式部の「願い」が、これまた平安文学ファンの悲願である「源氏物語の結末」に関するものだとは…ッ!!— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・現時点での「源氏物語の結末」は「未完」とも判断できる曖昧なもので(自殺し損ねた浮舟に薫が「会いたい」と願って終わる)、多くの研究者が「将来(紫式部が書いたが失われてしまった)続刊が見つかるかもしれない」、「いやこの終わり方こそ紫式部の狙いだった」と、見解が多岐にわたっています
— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・そうした状況のなか、今回のシナリオで(紫式部のサーヴァントである)バベッジが消え去り際に「夢」について語ったのは、『源氏物語』最終巻(とされている第五十四帖)の標題が「夢浮橋」であることと強く関係しているのではないでしょうか…
・あああ…尊い…尊すぎて全然シナリオが進まない…— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・もうひつ気づいてしまった…、今回のイベントマップで「貴族邸」と記された紫式部の邸宅、史実上の「堤中納言邸」があった場所じゃないですか…(左側にあるのが鴨川で、現在は廬山寺がある)
・堤中納言邸とは、もちろんあの「堤中納言物語」に関連づけられた堤中納言(藤原兼輔)が建てた邸宅です— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
・藤原兼輔は百人一首に「中納言兼輔」の名で採られた三十六歌仙の一人で、紫式部より百年ほど前に生きた式部の曽祖父です
・紫式部は、約百年前に建てられ、都の北東に位置し、耳を澄ますとかすかに鴨川の流れる音が聞こえる古い古い堤中納言邸で、『源氏物語』を仕上げたと言われています— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
(マップだと鴨川は御所の右側(東側)のような気がしますし私のツイートは「左側」と書いてある気がしますが平安京は「御所から見て右か左か」が重要なので、堤中納言邸は左側で鴨川はさらにその左側となります(嘘ですすみませんミスタッチです))
— たられば (@tarareba722) 2020年12月05日
@tarareba722 解説ありがとうございます。
いや、タメになります。
こういう知的好奇心が刺激されるのもFGOの大きな魅力かと。面白いなー。— ミハイル暁 (@goldendawn_) 2020年12月05日
@tarareba722 「草の庵」の面白さをここまで理解できるマスターがいるとは驚き。清少納言と紫式部の凄い所はその博識。当時は「女が漢文読むなんてw」と馬鹿にされた時代に圧倒的漢文知識で馬鹿にしてきた相手をやり込め、技巧溢れる和歌を詠む。正に才女だと思います。ff外からコメント失礼しました。
— パシフィック@オタクアカウント【趣味垢】 (@cultureaccount1) 2020年12月06日
教養ってこういうことなんだろうな…すげえ助かる…
— ししゃも (@mnpklove) 2020年12月05日
予想通り、たらればさんが滾っておられる。。あれだけ香子さんと清子さんが出張ってたらそりゃあなぁ。。
— ゆこ (@yuko_rose) 2020年12月06日
この手のクッソ細かいネタを解説してくれるのホンマにありがてえ
— くろずり (@krzr_wtmk2nd) 2020年12月06日
こんなレスバトルしてた平安貴族の教養凄い・・・凄くない・・・?